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『giinika』9号、特集「遊びと仕事と人権」のこと

『giinika』9号を手にとってくださった方々から早速いろいろな声が届いておりまして、いつも本当にありがとうございます涙 今回は3月からおっとり農園のにわとりたちが卵を産み始めてその産卵数が最近ぐっと増えたこともあり、9号とともに卵も抱え、いつにも増してのドタバタ汗だく配本でしたのですが、giinikaも卵もたくさん方々の手を介して巡っており感謝いっぱいです。あたたかなお力添えに本当に毎日背中を押されています。ありがとうございます涙

さて今回の9号特集テーマは、「遊びと仕事と人権」。冒頭には、毎号「つりちゃんのはなし」の語りでおなじみ、たつのこ保育園の「あたり前」を見直す保育の話が登場です。

たつのこ保育園は、まだ山形市内に産休明けから預けられる0歳児保育がなかった1980年代に、無認可保育所の職員さんと保護者、地域の方々が一緒につくり上げる認可運動で立ち上げられた経緯があり、その歴史については以前にWEBの記事にて取材していました。その際に、たつのこ保育園の保育の歴史において深く心に残ったことは、子どもと子を預ける親とが、ともに日々を安心して健やかに過ごせる保育の実践を考えてこられたということで、親は子どもを預けられればどんな場所でもいいわけではないこと、そして子どもが日々をその子らしく過ごしているという安心があるからこそ大人たちは仕事を通して自己や社会とのかかわりを深められるのではないか、という、保育士であり親でもある阿部幸子さんが話してくださったお話でした。それは、保育士と保護者とが、保育を提供する者と提供される者という区切られた関係性ではなく、地域の方々とも一緒になって、ともに保育をつくる、ともに成長を目指す、という考え方でした。 知らないうちに対立や競争へと煽られる場面が多い現代において、たつのこ保育園では、こうした保育実践がいまも受け継がれ、さらにその先へと眼差しを向けて、これまでの当たり前を見直そう、自分たちでつくり直そう、という機運が生まれています。9号特集で紹介するのは、その具体的な保育実践です。

たつのこ保育園のこうした保育の考え方や実践に、私自身も日常的に触れて学んできたわけですが、この貴重な取り組みは「保育」ということにとどめずに捉えることができるのではないか、その源泉にはもっと広くつながっていくような思想があるのではないだろうかと、ずっと気になっていました。そして今回9号にご登場いただいたみなさんのお話を伺ってみると、やはりこれは保育に限った話ではない、子どもと大人のそれぞれに関係する、その背景にあるものが、私自身見えてくるような感覚がありました。

子どもや大人との対話をどんなふうに進めていくのか、その具体的な方法を話してくださったたつのこ保育園職員のみなさんのお話と、大人の言葉を受け取る前に自分で考えたかった気持ちを語ってくれたなおくんと母・ちゃーちゃんの対話。

園庭という規制だらけだった場所を変えていく、その大きな一歩を先導して、大人同士や子ども同士での話し合いと納得、笑いのなかで保育をつくり続けてきた、たつのこ保育園園長のつりちゃんこと、太田二三枝さんの話。

「なんでこんなに先生の声が響いちゃうんだろうな」というご自身の違和感を出発点に、東北文教大学で子どもの遊びの環境づくりを研究され、その歴史的経緯においていま一番求められている「子どもの声を聞くこと」について話してくださった、同大人間科学部子ども教育学科准教授の下村一彦先生の話。

学校に行かないことを選ぶ子どもたちや被災した地域の子どもたちとのかかわり、子ども食堂の取り組みを通して実感された遊びの大切さについて話してくださった、ままらんぼ母親クラブ会長であそびあランドプレイリーダーの細谷由紀さんの話。

動物たちがたくさん登場する絵本作品をつくりながら、人が安心できる場所のこと、自分とは違う人と出会った子どもの頃の体験についてにこやかに語ってくださった、絵本作家のかめおかあきこさんの話。

イスラエル人とアラブ・パレスチナ人とがともに働く「ガリラヤのシンディアナ」からオリーブオイルをフェアトレードにて輸入して販売し続け、報道されないけれど現地で起きていることをつぶさに見つめて発信を続けていらっしゃる、パレスチナ・オリーブ代表の皆川万葉さんの話。

なぜ性で人を区別するのかという観点からのフェミニズム、法哲学を専門とされ、どんな立場からも必要とされうる理論、個人が尊重される言葉を研究されてきた、山形大学人文社会学部教授の池田弘乃先生の話。

『わたくしたちの憲法』という一冊の本から、出版や表現を支える憲法、その憲法を支える個人と個人との関係性について、颯爽と率直に綴ってくださった、出版社・吉田書店代表の吉田真也さんの寄稿。

意見の異なる人の声を無視することなく、共感と疑問とを自己のなかに留め、他者に伝えられるかたちになるまで考え続ける方たちには、楽しさや笑い、自己と他者とがともにあるための思考や工夫が満ち溢れています。そして日々押し寄せては知らず知らずに内面化してしまっている二項対立の発想を、こうしたエピソードと言葉とが、豊かにしなやかに解きほぐしてくれるようでした。

それは、特集に限らず、『こころの通訳者たち』の上映会を企画された田畑優さんと、同作に登場されていて東京・田端のユニバーサルシアター、シネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚千穂子さんとの対談や、山形県視覚障がい者情報センター職員で、『こころの通訳者たち』上映会スタッフでもいらした西田竜也さんの寄稿、「暮らして創る 山形の現代作家」における、「絵描き」の土井沙織さんと山形美術館副館長兼学芸課長の岡部信幸さんとの対談、おっとり農園にてあらゆる循環を見つめる丸山傑さんの寄稿という、9号のすべてに通じているものだと感じます。

また、いつもあまり触れられないのですが、「読者の声」でご紹介しました読者のみなさんのご感想にも、今回もはっとさせられ、勇気づけられるばかりでした。本づくりはつねに読者のみなさんととともにあることを感じています。いつも本当にありがとうございます。

こうしてまた奇跡のようにして出来上がった9号が、届くべき方々のもとへきっと届きますようにと祈るばかりです。みなさまぜひお近くのお取り扱い店さんにてお手にとってご覧いただけましたらうれしいです。

9号も、どうぞよろしくお願いいたします。

giinika9号

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