『giinika』3号特集、お日さま農園さんのこと
昨日は『giinika』配本の中休みにて、久々にお日さま農園さんで農作業の1日でした。秋の見事な収穫、冬のニンジン1本引き抜くのに数時間という豪雪を経て、また新たに始まろうとする静かな畑で、マルチを引き剥がしたり、雪の中を耐え抜いたキャベツやニンジンやネギを収穫したりしました。
『giinika』3号の特集扉の文章でも少し触れているのですが、お日さま農園の佑貴さんに初めてお目にかかったときの誠実な印象や、野菜と向き合う貪欲な姿勢は、配達いただく野菜のおいしさとともにあまりに気持ちのいいものでした。そして実際に農作業に加わってみると、沙織さんの野菜や家族へのまなざしに、そこはかとない優しさを感じる場面がたくさんありました。けれども一方では、西尾夫妻の毎日は、言葉よりも日々身体に刻まれていて、延々とマルチを剥がし続けたり、半日もかけてハウスで水やりを続けたりしながら、収穫した野菜を食べ、子どもたちと過ごし、当たり前のことですが、まず精一杯に暮らしていらっしゃいました。だから特集の取材としてお話を伺ったとき、お二人は農業について特別な言葉で語るというより、日々のこと、暮らしのことを、淡々と語ってくださったという印象がありました。それをお聞きして、正直なところ私は少し混乱したのですが、もしかすると有機農業というものを自分はなにか特別なものにして消費してしまっていたのではないか、そこに一般的な情報による先入観があったのではないかということに思い至りました。だからこの3号では、とにかくお日さま農園さんが実践されていること、「有機農業」という言葉の手前にあるものを、一部ながらじっくりお伝えできるようにということを考えました。そして、西尾夫妻がお話のなかでいろいろな角度から話してくださった「受け入れたい」という言葉を深く考えていくなかで、それは有機農業そのもののあり方であり、人や地域がともに暮らしていくことのもっとも基盤となるものではと考え、特集タイトルに決めたのでした。
昨日、農作業のなかで、研修でこられていて『giinika』3号特集にも登場するニノ戸新太さんが、「3号に登場する方々全体において、特集テーマの『受け入れる』ということがすごく感じられた」とおっしゃってくださり、とてもうれしくご感想をお聞きしました。『giinika』では、私自身が魅せられ、気持ちよさを感じる方々のもとへとひたすらに伺って取材をしていますが、それはまさしく人や環境を受け入れながらも、自分のものの見方で全体を捉え、目の前に集中している方々を追いかけていたのかもしれないと、なにか気づかせていただいたような思いでした。
気持ちよさというものには、立場や意見の違いのなかでも対話へと開かれている自己とか、矛盾や弱さや失敗を受け入れている強さとか、そういうものがあるように思います。ただ同質化するのではなくて、違いを認め合える科学的な姿勢が、人や自然との対話においてもっとも大切なもののように感じます。そしてそうした科学的な農業の姿を、お日さま農園さんにも見せていただいたという気持ちです。きっとますます試行錯誤されながらご自分たちの有機農業を深めていかれるお日さま農園さんに、ぜひこれからも参加させていただきたいなと思います。