logo

giinikaとは  最新号(vol.4)もくじ  販売店  ご購入方法


『giinika』4号「映画をつくる現場から② YIDFF畑あゆみさん×大久保りささん」記事を期間限定で公開!

続きまして、giinika4号「映画をつくる現場から②」記事公開のお知らせです!すでにチケットも発売中で話題の「YIDFF2021 ON SCREEN!」の上映イベントですが、昨年オンライン開催となった山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)2021の上映作品の一部が、10月7日(金)から10日(月・祝)までフォーラム山形にて上映されます。このたびのgiinika4号では、この夏ほぼ毎週末、県内の上映現場へと奔走されているYIDFF事務局長の畑あゆみさんと、事務局スタッフの大久保りささんに貴重なお時間をいただきまして、お話を伺いました。映画祭や映画上映の場をつくる事務局のお二人はどんなふうに映画と出合ってこられたのか、さらに10月の「YIDFF2021 ON SCREEN!」の上映イベントのことなども、あれこれ率直にお話しいただいています。4号刊行が9月末予定となっており、やはり発行してから上映イベントまでの期間が短くなってしまうため、できるだけ多くの方に記事をご覧いただき、ぜひリバイバル上映にお出かけいただければと、期間限定にて本記事も公開いたします。なお、東京では、ドキュメンタリー・ドリーム・ショー ――山形 in 東京2022が11月5日から開催の予定です。お近くの方はぜひこちらにもお出かけください!

* * * * *

映画をつくる現場から② 山形国際ドキュメンタリー映画祭 畑あゆみさん (事務局長)× 大久保りささん(事務局スタッフ)

★ 山形県内各地での映像制作から上映まで、あらゆる映画づくりの現場を訪ねる本企画。第2回では、1989年以来2年に一度開催されている山形国際ドキュメンタリー映画祭の活動現場へ。昨年開催の山形国際ドキュメンタリー映画祭2021は、新型コロナウイルスの感染拡大状況からオンライン開催となりましたが、2022年10月には、一部の上映作品のリバイバル上映も予定されています。「ドキュメンタリーというと、少し難しそう」といった声もよく耳にしますが、実際に事務局で働く方々は、それぞれの興味や映画とのかかわりから映画祭に参加するようになり、映画に触れる場づくりに、日々奔走しています。今回は、事務局長の畑あゆみさん(写真右)と、事務局スタッフの大久保りささん(写真左)にお話をお聞きしました。

YIDFF事務局の畑さん、大久保さん

──8月は山形国際ドキュメンタリー映画祭(※以下、山形映画祭)ほか主催の野外上映イベントが目白押しですね

畑 はい、激務です(笑)

大久保 つい先日も、やまぎん県民ホール前広場での野外上映会がありました。

畑 朝11時頃からジョイントを組むプロの方々の指示に従って、みんなで2時間かけてスクリーンを張って。今日は雨天なので体育館に変更。いずれも1日がかりの肉体労働でへろへろです。

──いつもながら本当にお疲れ様です。こうした上映イベントも、山形映画祭も、いろんな仕事をもつボランティアさんが場づくりに参加されていて、心地いい雰囲気を感じます。畑さんがボランティアに最初に参加されたのはいつですか?

畑 2‌0‌0‌1年ですね。山形映画祭に参加する前に、昭和期に活躍した日本の代表的なドキュメンタリー映画監督である亀井文夫の特集プログラム用カタログの編集を手伝うことになって。当時、大学院生として亀井や同時代のドキュメンタリー映画監督作品の研究をしていたんです。山形でそのとき上映された亀井文夫の映画特集プログラムでは、彼がかかわった作品が初めて一堂に見られたんですね。それは、このプログラムのコーディネーターを務められた安井喜雄さんの知識とネットワークがあったからこそで。日本の記録映画の歴史をたどる特集を1‌9‌8‌9年の第1回から年代を追ってやってきたことは、この映画祭のとても重要な功績だと思います。そのような流れから、カタログ作りのお手伝いに飽き足らず、映画祭当日も、私はボランティアとして参加しました。

 映画研究そのものに出合ったのは、イギリスの北アイルランドにあるアルスター大学に留学したときです。それまでは映画史も全然知らなかったんですが、イギリスでは、映画も文化の一つとして研究する理論と体系ができていて、映像に表れた表象や政治的なものをどう分析するかといった視点がおもしろくて。帰国後、日本の映画史を学ぶために大学に入り直し、山形映画祭とつながったというわけです。私はテレビドキュメンタリーはよく見ていたんですけど、もともとそれほど熱心な映画ファンではないんです。私の興味の中心は映画の歴史。人間なんでもかんでもはできないです(笑)

大久保 畑さんの話、すごい気になりました(笑) 映画祭って、そもそも映画を上映する場のように思うんですけど、そこに興味はなかったんですか?

畑 上映の仕事自体には正直そこまで関心はなかったので、事務局に入るかは3、4カ月悩んだんですよ。ボランティアや観客として5回かかわり、2‌0‌1‌0年に声をかけてもらって。でも、亀井文夫特集のような他にはないユニークなプログラムがあり、1週間でたくさんの作品が見られる山形映画祭の運営の仕事にはやはり興味があったので、まずは石の上にも三年と思って入ったんです。

大久保 入ってみて、いかがでしたか?

畑 ほぼ想像通りで大変でしたよね(笑) 初年度はわからないことも多く、辛いことがたくさんありました。入ってから半年で映画祭があり、私はインターナショナル・コンペティション部門の担当でしたが、それはおもしろかったですね。上映作品の監督とのやりとりや会場づくりのほか、上映後の質疑応答の司会をボランティアさんにお願いしたり。すべて初めてでしたけど、1回やってみないとわからないなと思ってやっていました。

──大久保さんもボランティアとして参加されてから、2‌0‌2‌1年に事務局スタッフになられていますね

大久保 山形映画祭を知ったのは、東京に住んでいたときに映画館で見たいくつかのドキュメンタリー映画のチラシに、山形映画祭での上映作品と書いてあって。こういう映画を上映する映画祭が、国内のしかも地方都市にあるなんてすごいなと思って。仕事の都合でなかなか参加できなかったのですが、2‌0‌1‌9年にようやく参加しました。そのときに、本当に手づくりの映画祭なんだなっていうのが、ボランティアとして参加したからわかったと思います。憶えているのが、会場準備のための単純作業をしていたときに、大学で映画研究をされている先生もいれば、普段あまり映画を見ない方もいるなど、所属も世代もバラバラで。肩書きや立場に関係なく、それぞれの目的で参加する場所なのだと実感しました。あとは、上映作品のなかでも説明の少ない実験的な映像作品が上映されたあと、質疑応答で登場した英語話者の監督に、山形弁で熱心に話しかける年配の女性を見かけたりしました。監督は通訳を介していることを忘れているかのようにその言葉を喜んで受け止めていて、そんなふうに映画を介して異なる文化的背景をもつ人たちの交流が起きているのが、すごくいいなあと思って。普段あまり映画を見ない友人にドキュメンタリー映画を見ているという話をすると、「自分とは違うものを見ているね」って、そんな言葉で終わったりしていたんですけど、こういう混ざり合い方があるんだなあと思ったのが、山形映画祭っていいなあと思ったきっかけでした。

──山形映画祭では一見劇映画のような作品も、作者の考えや制作背景からドキュメンタリーと捉えて上映されていたりしますよね。それは映画祭に参加して初めて知ったことでしたが、参加してみて驚いたことなどはありませんでしたか

畑 ドキュメンタリーというジャンルへの確固たる思い込みは、私も研究を始めた当初にはもちろんありました。ドキュメンタリー映画にフィクション的なものもあることは知っていましたけど、仕事のなかでは線引きをしていかないと進まない場面もあり、あるとき事務局内でそんな話をしたら、古参のスタッフから怒られたりしましたね。つまり、作品を受け取る事務局側で、それがフィクションだ、ドキュメンタリーだと決める権利はないのだと。作家がそれを「ドキュメンタリーです」と言えば、それはドキュメンタリー作品なんです。2‌0‌1‌9年にインターナショナル・コンペティション部門で上映した牧野貴さんの作品が良い例ですが、抽象的な映画や実験的な映画についても、選考会では議論になります。映画とは自由なものであり、その見方もあらゆる可能性に開かれています。事務局の私たち自身が狭い固定観念にとらわれず、頭と感性を常にやわらかくしておかなくてはならないと感じています。

大久保 私がよく憶えているのは、2‌0‌1‌9年の日本プログラムで上映された草野なつかさんの『王国(あるいはその家について)』ですね。この作品は、フィクションの物語のリハーサル風景を繰り返し見せるという手法なんですが、一つひとつの言葉や身体の動きが繰り返されるうちに、少しずつ違いが出てくるんです。生身の人間を撮るという点で、「そうか、これもドキュメンタリーなんだな」って思いながら見たんですけど、フィクションとノンフィクションの境目の曖昧さみたいなものを自分なりに体感したのは、このときだったなあと思います。

──2‌0‌2‌2年10月には、昨年オンライン開催された山形映画祭での上映作品のうち、30作品ほどがフォーラム山形にてリバイバル上映されますね

畑 山形市長賞を受賞したアルフォンソ・アマドル監督作品『カマグロガ』(写真1)は、スペインのバレンシア地方で代々生産されてきたタイガーナッツ栽培農家の父娘を追うドキュメンタリーなんです。父と娘の畑とのかかわり方は、生きものとしてのイネにカメラを向けた当映画祭の生みの親である小川紳介の作品にも通じるようで。ぜひ大きいスクリーンで見ていただきたいですね。それから、同じくコンペ部門で上映された『彼女の名前はエウロ―ペーだった』は、家畜化された牛の先祖にあたる野生種、オーロックスの交配の試みや遺伝子研究を神話のイメージを重ねながら追う作品ですが、今回は、本来の16ミリフィルムにて上映します。貴重なフィルム上映に、映写技師さんもいまからわくわくしています。また、香港の理工大学キャンパスでの学生デモ隊と香港当局との衝突のようすをデモ隊内部から撮影した『理大囲城』(写真2)は、昨年の大賞、ロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞した作品で、こちらも上映します。

大久保 高校生や大学生にもドキュメンタリー映画を楽しんでもらえるよう若い世代に向けたプログラムとワークショップなども現在企画を進めています。チケットは高校生以下は当日無料、大学生は前売券は1作品7‌5‌0円、当日券でも9‌0‌0円ですので、ぜひたくさんの方に見に来ていただけたらうれしいです。

写真1『カマグロガ』(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

写真2『理大囲城』(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

What to Read Next...

More »